PPPoEはその仕様の中で1つの回線に2つ以上のセッションを張ることがサポートされています。SOHOやビジネスユースを想定したBフレッツのベーシックタイプ,ビジネスタイプではそれぞれ2つ,4つのセッションが標準でサポートされ,インターネット接続とフレッツ・オフィス経由の企業ネットワーク接続をシームレスに扱えるようになっていました。
2002年10月からはフレッツ・ADSLやBフレッツのマンションタイプ,ファミリータイプといったパーソナルユース向けサービスでもマルチセッションがサポートされるようになりましたが,その背景にはコンテンツ配信があります。コンテンツ配信の際に一番問題となるのは著作権管理ですが,インターネットのようなオープンなネットワークでは管理が十分にできないという懸念があり,コンテンツホルダー(テレビ局やレコード会社などの権利者)がクローズドネットワークを志向する傾向があります。そこでCDN(Contents Delivery Network)という閉域網を別に立ち上げて,コンテンツ配信はそこで行わけるという方向に進んでいます。CDNはインターネットとは別のネットワークですからインターネットとは違う接続操作が必要になるのですが,それを意識せずにユーザー側でスムーズに扱う手段としてPPPoEマッチセッションが注目されているのです。
前項で書いたように,ビジネスタイプ,ベーシックタイプでは標準で2つ以上のセッションがサポートされていましたが,マンションタイプ,ファミリータイプ(やフレッツ・ADSL)では後から付け加えられました。この後から付け加えられた部分はNTT地域会社によって対応が異なります。NTT東日本エリアでは特に何もしなくてもマルチセッションに対応していますが,NTT西日本エリアでは「基本セッション追加」が必要になります(なお,フレッツ・プラスを利用してさらにセッション数を拡張することもできる。)。
すでに他のページでも述べたとおり,マルチセッションを実際に利用するにはフレッツ接続ツール(Ver.2以上)を使うか,マルチセッション対応ルータを使うかの2つの方法がありますが,ここでは後者をとります(フレッツ接続ツールを利用すると,2台以上のマシンで利用できない。)。
ここではフレッツ・スクウェアを例として説明します。マルチセッションに対応したルータでは,セッションの振り分けルールを設定するところがあります。ここで設定するルールは次の2つです。
1.フレッツ・スクウェアのドメイン指定(.fletsで終わるドメイン)
2.IPアドレスによる指定(10.0.0.0/8の範囲のIPアドレス;10.0.0.0〜10.255.255.255 ★NTT西日本エリアの場合。)
NTT-ME「BA8000 Pro」では3つの設定が必要になります。
他の機種ではDNSルーティング(名前解決をどちらのセッションで行うか)とポリシールーティング(実際の通信をどちらのセッションで行うか)を区別していない機種が多いと思いますが,それでも1.と2.の2つのルールを設定することは同じです。
フレッツ・スクウェアで配信されている倉木麻衣出演の「Mai-K TV」を再生させながら,Ring ServerでFreeBSDのISOイメージをダウンロードしています。(ただし,それなりのマシンパワーがないと処理がもたつきます。)